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サマリタンズホームページより/25号

 

2020年8月12日発行

■サマリタンズの年次報告書(2018-19)

解題:サマリタンズでは、自殺防止のため、通常のボランティアによる電話での傾聴以外に、ボランティア以外のいろいろな人による傾聴など多くの手段を企画実施しています。 例えば、刑務所での受刑者の中から傾聴者を選び必要に応じて傾聴してもらう、職場での同僚に対し傾聴者となってもらう、鉄道自殺防止を念頭に駅などで悩んでいる人に気が付いた人が声を掛けてもらう、特定の月曜に紅茶を飲みながらお互い話し合う機会を作る、電話の掛け手の内容を記録し次回の会話をやり易くする、など、自殺防止のためにここまでやるのか、と思える内容です。 是非ご一読ください。
Real People Real Storiesは励ますための実在人物の本当の話ですが、動画でも見ることができます。この4語で検索してみてください。以下訳者注は「注」とします。


 90分毎に英国、アイルランド共和国の誰かが自らの命を絶っています。その死の一つ一つが悲劇であり、サマリタンズで行っている事は、自殺で命を失う事を減らすという目標のために助けあう事です。我々は、もはや誰にも頼れなくなった人たちのlifeline(命綱、命の電話)であり、毎年サポートする人は増えています。英国及びアイルランドの201支部に約20,000人のボランティアが、6秒ごとに助けを求める電話に応えています。 我々は英国の至るところのコミュニティーでサポート活動を行い、刑務所から学校、職場、病院、さらに鉄道の駅まで含めます。

 昨年、我々の地元での奉仕活動は、50万人の人に及んでいます。自殺を減らすためには自殺を考えている、最も危険にさらされている人にまで、手を差し伸べる必要があります。

 50歳以下の男性での、一番の殺人者(killer)は自分自身(=自殺)であると知られていますが、自らの困難(悩み)に立ち向かい戦っている人が誰かに助けを求めるのは恥であり汚名を被る、という風潮がまだ残っています。 そのために、我々は新規の気づきのキャンペーン、Real People, Real Stories(実在の人々による本当の話)を立ち上げました。これは、手遅れになる前に助けが必要な実在の人が、いろいろな大変な思いをした本当の話を共有するためのものです。 我々は、皆、家族、友人、同僚、見知らぬ人、など他の人を注意して見ることができます。我々の受賞した Small Talk Saves Lives (ちょとした会話が命を救う)キャンペーンでは、誰かを見て悩んでいる人であると確信した時、悩んでいる人に手を差し伸べて話かけてほしい、と喚起させています。 この事は小さい事だと思われますが、これにより鉄道(自殺)で失われた1人に対し、6人が周りの人により救われています。

 政府へ不平等から起きる自殺の危険を提言しました。また自殺や自傷行為につながるオンラインコンテンツが増加したので、政府と人気のソシアルメディア会社に対し、影響を受けやすい弱い立場の人に対して、ソシアルメディアがより安全になるように提言をしてきました。我々は、我々を必要とする人にいつでも手を差し伸べられる方法を探しており、現在の命の電話と併せてウェブチャットを始める予定です。 その他、職場で利用されるウェブのツール、個人向けのツールを開発しました。

サマリタンズの戦略

 自殺を減らすための協業は2015年に発足し、2021年に向けてのビジョン、すなわち優先的分野、大きな効果を生む活動方針を示しています。自殺による死亡者数を減らすためのビジョン達成のために、我々は4つの優先的分野を見極めました。

 サービス:我々はサービスの質と一貫性を改善します。

 アクセス:我々はサマリタンズへのアクセスをより易いように改善します。

 協業体制:我々は、より強力で効果的な外部団体・外部組織との協業を図ります。

 記録・集計:我々は記録の収集と利用、そして集計、統計データの活用を改善します。

 ここからは、2018−2019年での主な成果に焦点を当てます。

サービス

 サービスの質と一貫性を改善し、サマリタンズの利用者には、期待された会話ができ、より共感してくれた、より親身に対応されたと思われるようにする事、および、サマリタンズでの研修、ボランティア、役割は、その人のスキルから判断して適材適所となるようにされていること、確実にします。

・我々の、人を保護するための方針と手順を継続活用します。社会の中で一番リスクのある人々を保護するため、子供または、社会的に弱い立場の大人が危害を加えられ、虐待され、無視されているとボランティアが信じられる時に、必要とされる対応手段についてガイドし、保護できるようにしました。 昨年は、刑務所で使われる一つの企画である Listener Scheme(傾聴のしくみ 注:傾聴者養成プログラム、刑務所での受刑者の中から傾聴者を選び育成する活動)を導入しました。ここでは、経験あるボランティアの保護職員を増員し、保護基準に合った対応を実施させています。この職員は外部と連絡ができ、必要に応じて外部への報告がなされます。

・我々は継続してサービス向上を目指す新しい基盤形成をします。我々は人々がなぜ我々にコンタクトを求めてきたか、どのように我々のサービスを活用したかについて、eLog(会話記録)を通して、傾向や見通しを収集しています。コンタクトについて、匿名で、一貫性のある方法で、データを集めることができます。 このデータ(約1500万件)を通じて、掛け手の主な5つの問題が明らかになりました。精神、家族、人間関係、孤立・孤独、身体についてです。さらに会話記録から、意味のある傾向と見通しが得られています。例えば、精神的サポートの会話時間は約20分ですが、30分になると、自殺願望を表現するようになり、さらに午前中の早い時間や日曜に掛かってくるものが顕著です。 また男性の方が女性に比べて孤立・孤独を強く感じ、クリスマスではより顕著になります。これらの傾向・見通しは、サービスの向上のためボランティアに伝えられ、いつボランティアが一番求められているかがわかるようになっています。 刑務所でのListener Scheme(傾聴のしくみ、注:傾聴者養成プログラム)では匿名データを収集できる新しい方式を導入し、サービスの活用され方、我々が何をターゲットとするか、どこで一番求められているかがわかり、求められる新しいサービスの開発にもつながります。

アクセス

 サービスを向上し、以下を確実にします。

 全ての命の電話は掛け手に対し無料とすること、より良く気づくキャンペーンは(必要性の事実に基づいて)弱い立場のグループを対象として、地元向け/全国向けとして配信すること、eメールやSMSなど文字使用メッセージは統合的交信とすること、心のケア、精神的(心理的)なサポートは支部の外で提供すること(注:専門的な心のケア自体はサマリタンズの範囲外)、掛け手が電話をかけた時に必ず会話が成立できるようにすること、自殺に影響された人々へのサポートが提供されること。

 その結果、

・毎6秒毎に、電話、eメール、SMS、手紙、面談による問い合わせに応えました。

・サマリタンズのボランティアは、電話360万の呼出し、SMSでは67万5千件(前年比17%増)、e-メールは33万件(前年比15%増)、手紙は1,200通を返事しています。面接は30,000件。私たちはサービスをより利用しやすく工夫しました。その結果大部分の利用者が彼らの必要とする支援を必要とする時に受けたといえます。

・電話が掛かるまでの待ち時間は平均1分、ただし、深夜ではそれ以上となります。

・掛け手がボランティアに対して嫌がらせ(又は迷惑な)利用をした場合、そのことを公表する追加の対策を取りました。この結果、ボランティアへの嫌がらせの件数は著しく減少しました。

・昨年傾聴のボランティアは1000人の増加があり、今後も募集手続きの改善を図り、掛け手の必要に応じました。

・新しい柔軟な募集手続きを試行・導入して、離脱者を少なくできるようになりました。調査の結果を反映して、新しいボランティアを継続させる計画を企画して実施しています。この作業により、ボランティアが辞める理由がわかり、彼らを引き留めるための改善ができました。

・引き続き新しい自助的ツールを開発し、自殺への思い込みをなんとかしようとする人を助けています。これは自殺への考えと安全に向き合えるように、またはこの(自殺の)考えが発展するのを防ぐ狙いがあります。 ・学校、大学、短期大学へのStep by Stepという実務的サポートを提供しました。これは、自殺未遂または自殺念慮がある人への助言やガイド、教材を提供するための特別なトレーニングを受けたボランティアが行います。Step by Stepのチームは2018年に130の学校や集まりにおいて自殺未遂または自殺念慮の人に会いました。 我々は、若い人たちが精神的健康状態に気付ける方法と、必要であれば助けを求める事について、より良く理解してもらうために活動しました。ボランティアたちは新入生説明会、精神健康の催しに参加し、ワークショップを開催し、説明しました。昨年は、2200回の訪問を行い、13万人以上の人に説明できました。

・DEAL(Developing Emotional Awareness and Listening、感情への気づきと傾聴力の発達・養成、注:英語のDEALには取引、約束の意味があります)の教材は引き続き良く利用され、2018年には毎月3500人に利用されています。我々は、鉄道会社への事件発生後のサポートを行いました。我々には、英国交通警察から81件の問い合わせがありました。

・軍関係者、予備軍、退役軍人、その家族へのサポートを、継続して企画してきました。20万冊のポケットガイドを作成し、彼ら自身による感情の健康管理をサポートしています。

・職場において誰かが悩んで苦しんでいるとき、その人の悩みを積極的に傾聴し、困難な会話をやりくりしながら、その人に介入するスキルを身につけてもらえるオンラインの受賞学習教材であるWellbeing in the Workplace(職場での福利、職場での幸福)を引き続き提供しています。

・サマリタンズの刑務所での活動が評価され、スコットランドと北アイルランドでの刑務所のサービスに対しての資金増加を達成することができました。Listener Scheme(傾聴のしくみ)は現在アイルランドの全ての刑務所で実施され、刑務所内での支援も充実されつつあります。

・刑務所および保護観察所の職員が、サマリタンズに出向して、サマリタンズの支部と刑務所、出所後の傾聴者となる機会を得た人をサポートする事ができました。我々は、刑務所をサポートするボランティアを募集する一連の資料を作成しました。これは全国で使われています。 これには、募集用映画、ポスター、プレゼン資料、刑務所でのサポートでのガイダンス資料を含みます。刑務所での傾聴者の傾聴者養成プログラムを実施するための十分なボランティアの数を維持するために活用されます。

協業体制

 我々はより強くより効果的となるように外部団体・外部組織との協業体制の強化を行ない、次のことを実施します。

・我々は弱い立場のグループ(特に中年の男性、社会経済的な貧困、精神上の健康の問題を持つ人々)と活動しているパートナー組織との委託関係を保ちます。

・オンライン上の弱い立場の人たちが認識され、この人たちがサポートも受けられるようになり、有害なオンラインコンテンツとの接触はなくなりました。

・国および地元での自殺防止の政策および導入について、地元及び国に対して強い影響力のある関係を築きました。

・我々は、掛け手の関心項目を理解し、その事から、助けを求める人を探し、公共機関の方針と実行性に対し影響力を高めようとしました。我々はすべて英国内の国において、国会での提言グループの一員となっています。英国では、全党議員による自殺および自虐行為防止会議でのプログラムの提供を含みます。 我々は自殺防止の問い合わせにおいて、自殺者のうち、精神上の健康のサービスにコンタクトする事が無かった3分の2の人に、手を差し伸べる必要性を強調しました。

・我々は、スコットランドの国による自殺防止行動計画の作成に協力・貢献し、スコットランドのNHS(National Health Service、国民保険サービス)と連携し、また、Health and SocialCare Alliance((健康社会介護機関)にて、愛する人を亡くした人、または自殺思考を経験した人びとに付き添う機会がありました。

・我々は、不平等と自殺との関連についての画期的な活動を行ってきました。2017年の「不平等からの自殺レポート」に引き続き、不平等と自殺のリスクとの関連のインパクトをどのように公表できるか、政治家と(業界の役員など)意志決定者達との協業を行いました。

・今年は孤独と自殺について政策策定の活動も発展させました。これは、孤独、自殺、若者についての新しい政策と研究の報告です。

・我々は政府や企業に対して有害なコンテンツと自殺や自傷行為との関連について、提言するにあたり先導的な役割を果たしてきました。若い人たちの間で、オンラインコンテンツが自殺や自傷行為に果たしてきた役割について著しい注意が払われ、長い間の協力関係をもつ企業、たとえばFacebook,Google,Instagram,Twitterと共に、政府や企業に対して最新の状況・集計を示し、何に対応すべきかを提言しています。

・我々は継続して、National Suicide Preven-tion Alliance(国による自殺防止連合)をサポートして、その会議での運営と議長を務めています。我々は、我々のメディアへの助言とサービスとして、自殺について責任あるコンテンツの掲載をお願いしています。

・我々は、自殺を減らすため、鉄道会社と9年目の共同作業に入っています。ここではSmall Talk Saves Lives(ちょっとした会話が命を救う)という寄り添う人のキャンペーンの第3フェーズに入っています。ここでは、国有鉄道によるReal People Real Stories(実在する人々による本当の話)と同様に行われています。 我々の気づきのためのキャンペーンReal People Real Storiesは、主として鉄道での自殺の危険がある人を想定していますが、それ以外でも有効です。このキャンペーンでは、助けを必要とする人の大変な苦労をした時の本当の物語を共有しました。

・毎月第三月曜に、Brew Monday(月曜のお茶会)キャンペーンを行いました。ブルーマンデイと言われているものを覆して、一杯のお茶を飲みながら、語り合うためのキャンペーンです。今年は、10万個のティーバッグを使い、150ヶ所以上の地方の駅で行いました。

記録・集計

 サマリタンズの記録から集計して得られた実績の統計データの事実から、何が有効だったか、何が改善し発展したかがわかります。記録や統計を活用し、サービスの発展と影響力を向上させます。記録・統計を元にした活動ができるように、組織の中で優先順位による記録や統計にアクセスできるようにしています。

<追加的支援>
・掛け手の事が気になり、さらなるサポートが必要だと考えたとき、サマリタンズの中央オフィスの発信支援チームから掛け手を確認します。我々はチームとして活動しており、最善の可能なサポートを提供したいからです。掛け手が誰と会話しようとも、掛け手の最新の状況を知っているべきだからです。これは掛け手が、前回の会話をもう一度繰り返すことが辛かったり、それが大変なときだったりした時に助かります。 (注:場合によっては、掛け手について会話などが記録されます。)

出典:https://media.samaritans.org/documents/Samar-itans_Annual_Report_2018-19_FINAL.pdf


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