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サマリタンズホームページより/32号

 

2023年6月30日発行

■イギリスSamaritansにおけるインターネット(メール)相談の現状

解題:イギリスのサマリタンズが電話相談にプラスしてメール相談を始めた動機が書かれています。1980年代後半、若者の自殺率が高くなった時、若者からの電話相談がかかってこなくなり、若者の電話離れという現象が起こっていました。 どうしたら悩める若者がサマリタンズにつながるかに悩んだ相談員の一人が、メール相談を思いつきました。1992年にjo@samaritans.orgのアドレスで相談窓口を開設しました。約10年間の試行錯誤の末、2002年に本格的にサマリタンズはメール相談を開始しました。 メール相談の目的、運営、返信数等が書かれています(なんと1日に600件!!)。

はじめに
 イギリスのSamaritansにおけるインターネット(メール)相談の現状を紹介するにあたって、SamaritansのHP("Samaritans"で検索可能)に掲載されている内容を全面的に参照・活用したことをお断りしておきたい。

Samaritans の歴史
 初潮を梅毒と思い違いして悩み、誰にも相談することなく自らの命を絶った14歳の少女がいた。そのことで心を痛めた牧師(兼カウンセラー)のChad Varah(1911年〜2007年)が「どんなに恥ずかしいことでも安心して相談できる」自殺防止のためのボランティア電話相談(面接・手紙相談を)を始めたのが1953年の11月であった。
    この運動はアイルランドを含むイギリス全土に広がり、60年後の2013年現在で支部(branch)数は201箇所、ボランティア数は約20,000人の大きな自殺防止の組織になっている。また、このSamaritans運度は全世界の自殺防止電話相談機関設立の原動力になり、日本では1971年、東京に「いのちの電話」が設立された。

インターネット(メール)相談の歴史
 1980年代、自殺率と自傷行為率に10年近く変化がない中で、特に1980年代後半、若者たちの自殺率が非常に高くなった。そんな状況の中、電話・手紙・面接の手段だけではSamaritansのサービスにたどり着けない人々にどうしたら接触できるかの方法が模索されていた。
 1992年、Cheltenham支部の一人のボランティアSteve Harrisが先導者となってEメールで情緒的・心理的支援を始めた。情緒的・心理的に落ち込んでいる人がjo@samaritans.orgにアクセスすることで、Samaritansにつながることができるようになった。
 その後、この試みは拡大発展しながら8年間続き、ついにSamaritansの組織としてもボランティアとしても、自信を持って要求に応えられるようになった。そして2002年、Eメールによるサービスは全国規模で本格的に開始された。
 これに加え、現在はSMS(short message service)を活動の一環に加え、2012年3月の段階で201支部中106支部がこの活動に参加している。2011年の利用数は225,152件で、メール相談数の206,078件を超えている。

メール相談の実際と運用
 実際の活動を理解するために、2013年のHPからメール相談利用者への「呼びかけ文」全文を以下に紹介する。

サマリタンズのメール相談(e-mail Samaritans)
「サマリタンズに時々メールして、今6年経ちます。自殺を考えるほどではありませんが、ただ誰かと話したいだけです。時には自分が感じていることを書き出すことが助けになります。」
 時には電話をかけるのが難しいと感じることがあるでしょう。時にはあなたの考えや感じていることを書き出すことが考えや感情を理解する手助けになります。私たちボランティアは1日に約600通の返事を書きます。
 私たちが受け取るメールの約半数は困難な時間を過ごしている人達で、自殺を考えている人たちからではありません。

返事が来るまでどれくらい待ちますか?
  受け取ったメールに対し12時間以内に返事する目標を立てています。どれくらい速く返事ができるかは、どれくらいの人数のボランティアがその時その仕事にかかれるかにかかっています。 メールして24時間以内に返事を受け取らなかったら、あなたのメール・ホルダーを調べてみてください。あるいは、最初に送った時に不具合が起きている万一の場合を考えて、再度送信してください。

わたしのメールアドレスを誰にも見せてほしくないのですが
 送信されたメールは100%秘密扱いにされます。あなたのメール・アドレスを含むすべての情報は、ボランティアがそれを見る前に取り除かれます。訓練を受けたボランティアのみがあなたのメールに返事を書きます。既につくられているメッセージが自動的に使用されることはありません。
 送信されてきたメールは中央サーバーに30日間保管されます。そうすることによって、あなたがもし再びメールした時に、私たちは前に送信した人であるかどうかがわかるからです。30日後には全てのメールは中央サーバーから削除されます。

どのようにして私のアドレスを見られないようにしますか?
 あなたのメールを受け取ったら、メール・アドレスは取り除かれ、特別な番号に入れ替わります。あなたに返事を送る時、特別な番号はあなたのメール・アドレスに戻されます。同じ特別な番号はそれぞれの送信されてきたメールに当てはまります。 そして、もしあなたが同じメール・アドレスから再びメールしてきた場合、前の特別な番号と照合し、そして30日以内に返事を書きます。
 このことは、あなたのメール・アドレスを知ることなしに、ボランティアに前に返事を書いた記録を思い出させる助けになり、さらにあなたの置かれている状況をよりよく理解する助けになります。

「呼びかけ文」の内容を箇条書きにしてまとめると以下になる。
1)メールを利用する人の約半数は自殺を考えていない人からである。
2)現在、受信したメールに対し1日約600通の返信をしている。返信数はこの作業に取り掛かれるボランティア数による。
3)訓練されたボランティアが返信文を書いている。
4)前もって作られている返信文が自動的に使用されることはない。
5)12時間以内に返信するよう目標を立てている。
6)受信したメールはメールアドレスを含み100%秘密扱いされている。
7)受信メールの保管期間は30日である。

2010年のメール相談数
以下の表は、メール相談数を含む2010年の利用者状況とボランティア数、支部数等の一覧で、2009年の数字と比較できるように作成されている。この表から、Samaritans活動全体に占めるインターネット相談(SMSを含む)の果たしている役割が読み取れる。

2010年統計(注1)
2010年2009年前年比
総利用件数(2) 5,000,0005,100,000-2,0%
会話成立電話件数2,320,0002,350,000-1,3%
会話不成立電話件数(3)2,237,0002,379,000-6,0%
e-mail相談件数190,350170,700+11,5%
対面面接件数27,65027,850-0,7%
手紙相談件数1,5001,350+11,1%
SMS相談件数168,500130,100+29,5%
支部の建物外での相談
サービス件数
17,75017,200+3,2%
自殺企図を持った相談
の率(4)
20%19%
ボランティア総数18,75018,450+1,6%
電話傾聴ボランティア数17,33017,150+1,0%
ボランティアが提供し
た時間の価値(5)
£56.3m.
(約96億円)
£50.0m.
(約85億円)
+1,1%
1支部平均の相談件数24,55025,120-2,3%
1相談件数の経費(6)£3.88
(約660円)
£3.27
(約556円)
+1,2%
ボランティアに対する
スタッフ(職員)の比率
205人に1人223人に1人
電話がつながらない話
し中の率(目標10%以下)
6,4%6,0%
e-mail返信時間(目標
は12時間以内)
8時間8時間
SMSの返信時間(目標
は60分以内)
38分50分
(表に関する注釈)
(1)
全ての数字は指定のない限り2010年1月〜12月までの12ヵ月間のもの。
(2)
各支部に記録された電話、Eメール、手紙、対面面接、短文メール、そして会話不成立電話を含む
(3)
電話相談は会話成立電話とかかってきた電話をかけ手から30秒以内に切った短時間(会話不成立)電話の2つに分けられる。
(4)
この数字は会話による相談に限って支部から報告された相談内容を基にしている
(5)
算出方法は電話傾聴ボランティア各々が1週間5時間働いていることを前提している。2009年〜2010年のフルタイム労働者の1時間平均賃金を基にしている。ここでの数字はボランティ アが提供した労働のすべてを反映しているわけではない。
(6)
この数字は慈善財団本部の実際の支出と支部の見積もり支出を基にしている。


おわりに
 2011年のインターネット相談数を紹介しておきたい。2010年の利用状況一覧表と同じ様式の2011年一覧表がHPのどこを探してもなかったために、2011年の数字はHP中から拾いあげたもので、2009年、2010年と比較できるようにしてある。また、参考として、SMS(short message service)の相談数を記しておく。
2009年2010年2011年
e-mailの受信数
返信時間平均
返信時間目標
170,700件
8時間
12時間
190,350件
8時間
12時間
206,078件
8.5時間
12時間
SMSの受信数
返信時間平均
返信時間目標
130,100件
50分
60分
168,500件
38分
60分
225,152件
38分
60分
ボランティア総数
リスニング・
ボランティア数
18,450人

17,150人
18,750人

17,330人
20,665人

17,369人
支部数201201201

 インターネット(Eメール)相談数は3年間の変化を見ると急速に増加していることが読み取れる。参考に挙げたSMSも同様である。
 SamaritansのHPからも窺い知ることのできるイギリスのインターネット社会への変化を考えると、インターネット相談は時代の要求(need)に的確に合致し、電話相談と並行し、自殺予防に果たす役割は今後ますます重要になってくるに違いないと思われる。

■セルフヘルプの方法

解題:サマリタンズのホームページでは、セルフヘルプ(自分自身へのいたわり)の方法を説明しています。ここでは、呼吸によるセルフヘルプを紹介します(QRコードまたはURLから最初の画面に入りますので、指定した所をクリックして進んでください)。

毎日あなた自身をいたわってください。

 あなたの気持ちがどのようなときにも使える、我々のセルフヘルプのアプリは、こちらです。リラックスのためのトレーニングをすぐに試すのもよいし、こちらにアカウントを作ってから他のトレーニングを試すのも良いでしょう(ここでのアカウント作成の説明は紙面の都合で別の機会になります。 Try a grounding technique(基礎テクニック)をクリックしてください。)

https://selfhelp.samaritans.org/
https://selfhelp.samaritans.org/

4対7対8の呼吸
 簡単な呼吸トレーニングで、あなたの心拍数や呼吸を落ち着かせることができます。やり方を覚えるのはたった数分で済みます(Get started(開始)をクリックしてください。画面に秒数が表示されます)。

 ここでは、3つのステップで行います:
1.鼻から、4秒間かけて息を吸います。
2.次に、7秒間息を止めます。7秒間止める のが苦しいときは、できる範囲で止めます。
3.最後に、8秒間かけて、口から大きく息を 吐き出します。
 大事な事は、このステップで、息を吐くのに一番長く時間をかける事です。

どのように効果があるか
 場合によっては不安やパニック障害は身体への影響を及ぼす事があり、これはとても怖いと感じさせるものです。具体的には、早い心拍や息が苦しくなると、更なるパニックや不安を感じるようになるのです。これは、悪循環となり、(悪化した)身体的症状は更なる不安を引き起こします。
 この呼吸トレーニングは、不安による身体的症状を緩和させたいグループにより有効であると検証されました。

呼吸トレーニングを控えるべき人とは
 この呼吸トレーニングを行ったあと、軽いめまいや、以前意識して呼吸して過呼吸を経験した方は、この意識しながら呼吸するトレーニングは注意して行ってください。
できれば、誰かと居るときに行ってください。呼吸について体調に疑問がある場合、このトレーニングを行う前に呼吸器の専門家への受診を検討してください。

呼吸トレーニングのコツ
 このトレーニングを最初に試す前に、どこか落ち着ける、プライベートな場所を探してください。
 舌の先を上の前歯のすぐ手前の上顎の部分に触れるようにしてください。この呼吸トレーニングの間、常に動かさず、同じ場所に付けてください。舌の先がここにあれば、口と鼻からの呼吸が楽になります。
 息を吐くとき、この舌のまわりから息が出ていきますが、苦しいようであれば、口をすぼめてください。
 この時間通りに呼吸ができない場合、時間を少し短くしてください。ただし、各ステップの時間の長さより、4対7対8の比率が大事です。一番大事な事は、吸う時間より吐く時間の方に長い時間をかけ、この二つの時間の間の時間をかけて息を止める事です。

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