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サマリタンズホームページより/29号

 

2022年1月24日発行

■本人が実話を語る

解題:“Real People, Real Stories”という特集で、サマリタンズに相談することで苦しみを克服した何人もの男性がその経験を語っています。 一人で辛さや苦しみを抱え込まないで、人に相談することがいかに大切かが語られています。立ち直ったあとでサマリタンズのボランティアになった男性もいます。今回は3人の話を訳出しました。 各訳文の最後に掲載した「出典」にアクセスすると、本人の語りを映像で見ることができます(2021.10.16現在)。

スティーブの話
話すことがあなたの人生を本当に変えます

 ウォルサール(Walsall)に住むスティーブ(60才)は、彼の継息子の自死が家族を絶望に陥れた過去があって、サマリタンズのボランティアになりました。彼は全国にわたるロックダウンで仕事を失った数千人のうちの一人です。

 ロックダウンが宣言される2日前、私は余剰人員とされました。20余年勤務し退職する前の最後の仕事だと思っていたので、そのことは大変なショックでした。
 私はこの事実を努力し受け入れ、自分自身を励まし続けねばならないと思いました。サマリタンズのボランティアとして、幸運にもサマリタンズの支所で話ができ、私を支援してくれる友人を得ました。
 ロックダウンは心の持ちようと物事に対する私の考え方に影響を与えました。すべての人の生活が顕微鏡を通して見るようで、坐って熟考する時間が増えました。
 もしあなたが孤立し、孤独でこの時を困難と感ずるならば、その感情を分かち合って下さい。あなたの友人でも、サマリタンズに電話することでも、話すことがあなたの人生を本当に変えます。

 2010年、19才のスティーブの継息子は自らのいのちを絶ち、家族は絶望に陥りそれを乗り切れず苦しんでいました。苦しんでいる人を支援できるようになりたいと、スティーブは5年前にサマリタンズのボランティアになりました。
 私たちはその到来が、そして正真正銘のショックであるかが分らなかったのです。悪い兆候に気づくことは少しもありませんでした。
 2010年、私たちは絶望に陥りそれをどうすることもできなかったのです。それは人に説明できるような感情ではありませんでした。自殺は家族全員に広がる衝撃波のようなもので、私たちは何故それが起ってしまったのか未だに分らないのです。

 彼の母と私の関係は、起ったことに対処できなかったので、結果として4〜5年破綻しました。私たちは子供のために連絡を取り合うことを続け、持っていた自信を何とか取り戻し、今は本当に強くなりました。
 私たちが経験した事は、2人がサマリタンズのボランティアになることに導いてくれました。私たちは一緒に自殺防止の会議に出席し、それは私たちを本当に惹きつけました。家に帰るなり私はサマリタンズに電子メールを送りました。6週間以内に、私は早くも研修を受けている状況になりました。
 それは5年前のことで、これまで私が成しえた最善の行動です。愛する人を自殺で失った人の電話に対し、あなた自身がそれを経験していると、異なった深さの共感を持つでしょう。それは私が本当に良い聴き手になることを助けてくれました。それが最も大事な事なのです。

出典:Home>Support us >Campaigns >Real People,Real Stories > Steve


マットの話
 マット、32才、ヨークシャー犬のアルフィーとサルフォード(Salford)に住む

10代の後半と20代の前半、うつ病で苦しむ時期がいくどもあり、2度自殺未遂をしました。最初の未遂は私が建築現場で働いている時でした。私はそこをひどく嫌っていました。
自分の好きな仕事ではないと感じているにもかかわらず、私は家族を幸せにしたいと思っていました。そこは独特な環境で順応するのに苦しみ、こころの健康をひどく害しました。私は左官職人として、週7日、1日13時間、休日なしで働きました。現場では何度もからかわれ、いじめを受けました。 学校を出てから最初の正規の仕事だったので、どう対応してよいのかわかりませんでした。生きてゆくのがとても辛く、ある夜いのちを絶とうとしました。一生を終えようとする時、私は友に携帯でメールを送りました。ところが、友は私の母にそれを伝えました。それは助けを求める叫びでした。

 その出来事の後、私は別の会社に移りました。状況は良くなりましたが、引き続きその仕事が嫌いでした。私は事務職に移るまで、その領域の仕事で15才から17才まで働きました。仕事が変ったことは私の精神的な健康に大きな変化をもたらし、併せて私はうつ病に対し主治医から抗うつ剤の処方も受けました。

 しかしながら、20代半ばまで、病状は回復しませんでした。私は沢山のテストと、胆汁酸吸収不良(Bile acid malabsorption)の診察を受けました。私は治療を受け始め、参加した支援グループである人と会いました。私たちはデートをし、引っ越して一緒に住むようになりました。 しかし、悲しいことに状況はその後悪化しました。私の相手は心の病の問題を抱えていて、一緒に住むことが難しく、そのことは私の心の健康に影響を与えました。

 ある夜、彼女は他の男とその夜をともにするため、出ていってしまいました。次の日、もう耐え切れないと再び判断しました。犬が私のいのちを救ってくれました。もし彼がそこにいなくて、飛び上がって私に吼えることがなかったら、今日ここに居なかったでしょう。 もう沢山だと自分に言い聞かせ、健康を取り戻さねばとの使命感を持って、私の両親の家に戻りました。
 私は心を開いて話せる真に支援してくれる友人を得ました。これまで何があって私がそれをどう感じているかを、やっと話せるようになった安堵を感じています。それはあたかも重圧から解放され、将来をもっと楽観的に捉えられるようになったかのようでした。

 私には自死した友人と、うつと不安で苦しんだ別の友人がいます。私自身がいくつかの辛い時期を克服したことと、友人たちが辛い時期を乗り越えるのを支援したことで、私の克服の経験はサマリタンズのボランティアとして役に立つ証になると思いました。  私自身が辛い時間を過ごしていても、私は友人が泣くのに顔を埋める肩の役目をしていたのです。それがうまくできる自信がありました。ある日混雑で往来を進めなくなった時、目の前のバスにサマリタンズの会員募集の広告があるのを見ました。このことが私に行動を起させ、私は応募しました。

 私はサマリタンズの面接を受け、その後ボランティアに採用されるかどうかの認定日に参加しました。そこでは困難な状態を私がどのように対応するかの筋書きを考えねばなりませんでした。研修は教室での教育につづき、指導者による訓練の期間がありました。 その後見習いになり、自身で電話を取りましたが、経験のあるボランティアが傍で立ち会いました。

 参加契約をする時はさらにうまくなって、ボランティアになれると強く感じました。研修を受けサマリタンズで友人を得たことが、行く道の最後で私を助けてくれたと知りました。サマリタンズの一員になって最もためになったのは、人は話し相手を本当に信頼した時、どんな気持なのか心を開けて語るということです。 これは家族や友人が相手ではできないと思われます。
 私は今、良い環境にいるという気持で、人生においてここに居ることが幸せです。ボランティアになる署名をしたことが、回復への道に到る最良の行為であったと申し上げたい。私は自分の気持を語ることが決して得意ではありませんが、ボランティアになる研修はこのことを実行するのを本当に助けてくれました。

  マット、苦しんでいる男の人にどんなことを伝えたいですか?
 苦しんでいるどんな人も、相手の人を知らなくとも電話すべきです。助けを求めなさいと言いたいです。一人で悩むことはありません。悩みからきっと解放されます。人生は続くのです。このことは言い古され、言うのは簡単ですが本当です。

  サマリタンズに連絡するよう人を勇気づけるのに、どんなアドバイスをしますか?
 サマリタンズのウェブサイトを見れば、あなたを支援してくれるボランティアにどのように連絡するかの情報を得ることができます。電話を掛け話し出す前に時間をかけても問題ありません。急がされることはなく、打ち解けた雰囲気です。 もし話ができないなら黙っていてもいいですし、あるいは電話を掛け直してもいいのです。
 電話で沈黙したままでいることをボランティアがどう思うか、誰も心配しなくてよいのです。そのような電話をしても問題なく、そのために私たちはそこにいるのです。電話の先に誰かいることを知っているだけで、時として決定的な違いが生じることがあります。

  苦しんでいる人に何を言いたいですか?
 孤立しないで下さい。問題の原因となっている辛いことを忘れられるような楽しい何かを見つけて下さい。何か楽しいことをしましょう。あなたに安らぎを感じさせる人が近くにいたら、その人たちと一緒にいることを心がけて下さい。

出典:Home>Support us >Campaigns >Real People,Real Stories > Matt


ジョンの話
 ジョン、38才、シェフィールド(Sheffield)に住む

 私は19才の時不安症とうつ病の診断を受け、一方ではその両方の影響を受け、記憶にある限りずっと苦しんで来ました。診断を受けた時私は大学で看護を勉強していて、就職の斡旋と与えられる任務について少し重圧を感じていました。近親者に3件の不幸もありました。家族、近所の人、そして大学の友人です。辛かったです。

 私はある特別な日を思い出す出すことができます。私はとても悲しい気持でした。眠ることができなくて、食べたくなくて、人と話す気も起きなくて、これらのこと全てが私は正常でないことを意味していました。私はかかりつけの医者に診て貰いに行き、医師が私のストレスやうつ病や心配症について話してくれたのは初めての経験でした。しかし、私がこれまでたくさんのことを乗り越えてきたので、そのうちよくなりますよと彼らは説明してくれました。
 次の夏が来て、私の気持は依然として正常でなかったので、気持が沈んでいるとまたかかりつけの医者に行きました。私たちはうつ病について話し、初めて薬を処方され、それを服用しました。

 それ以来、躁とうつの期間をくり返しました。知ったのはうつ病や心配症は人をほっておいてくれないという事です。数年後、眠れなくなり、いつも不安で、食事もとれず、人とのつきあいや仕事でもくつろげませんでした。私はまたかかりつけの医者に診てもらい、再び薬の処方を受けました。経過はほとんどくり返しでした。病状についてはその性質と期間とが変化しました。私はいつも克服しこれらの病状が消えるきっかけが何であるかを知りました。
 私がサマリタンズに電話したのは気持が落ち込んでいたからでした。誰かと話をする必要がまさにあったのです。その時、私は相手をえり好みしないで聴いてくれる人と話したいような気持でした。そして時は夜間でした。私は(夜間に)電話を掛けたりあるいは誰かを心配させたりしたくなかったのです。そうすることは当然のことと思えました。そのためにサマリタンズの人たちがいるのだと。
 不安な気持にもかかわらずボランティアが本当に支援してくれたので、電話してよかったと思いました。

 サマリタンズに電話した後、肩にのしかかっていた重圧が解かれたような気分になりました。安心感、気持の明快さの違い、そして考え方と感じていた気持が変ったのです。その夜よく眠ることができ、よりよい気分で次の朝起床することができました。やる気がさらに出て、私を苦しめているものに立ち向かえる気持になりました。電話は抱えている沢山の心配事を軽減してくれたのです。
 感情とこころの健康を上手に扱う一つの方法は、気持が落ち込んでいる時はこれらの感情を分かち合うことです。誰かに話すのです。以前はおそらくそうしませんでしたが、今はもっと分かち合っています。
 私のこころは開いていて、人とどのような気持なのかを分かち合うことは問題ありません。以前私を躊躇させたのは、羞恥心でした。しかし、誰かに話しかけ対話することは問題ないのです。感情を分かち合うことと話すことが出発点で、このことは本当に助けになります。抱えていることを語るのはこころの健康に良く、物事の全体像を見るのに本当に役立ちます。

 将来について前向きに言える事の一つは、この世を生きる道は一つだけではなく、いくつかあるということです。仕事であれどんな感覚であれ、その道があなたに合わなければ、別の道があります。あなたは幸せになれるのです。
 自分自身の話を分かち合うことが大切だったと思った理由は、他の人にとっても、彼らの気持が落ち込んでいる時、誰かに向けて心を開く望みが持てるからです。

 ジョン、苦しんでいる男の人にどんなことを伝えたいですか?
 必ず誰かに話をして下さい。それが誰であるかはあなたの自由です。私はサマリタンズに電話し私を知らない人に話をしました。その人は話を聴いてくれ、私がどんな気持なのか理解してくれました。その瞬間私の人生が変りました。

 サマリタンズに連絡するよう人を勇気づけるのに、どんなアドバイスをしますか?
 話を聴いてもらえていないと感じた時は、情報提供の電話(helpline)または緊急相談窓口(crisis team)に電話してみて下さい。いずれはあなたを支援してくれる人に出会うでしょう。
 サマリタンズのボランティアは24時間いつでも電話を待っています。あなたが孤独で孤立しているのを感じる夜間に電話を待っています。それでいいのです。彼らは支援するために電話を待っているのですから。彼らは支援したいと思っていて、あなたが心に抱えるものやあなたの気持を聴いてもらっていいのです。

前の生活に戻るのに何を勧めますか?
 支援を求めることが大切です。これを一人でやるのは常に可能とは限りません。不安とうつの症状、精神の病、これらに圧倒されかねません。それらは色々な形でその性質を現しますので、一人で戦うのは不可能です。

出典:Home >Support us >Campaigns >Real People,Real Stories > Jon            


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