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サマリタンズホームページより/28号

 

2021年8月13日発行

■ちょっとした会話が命を救う

解題:サマリタンズと鉄道会社が共同で行う、主に鉄道での自殺予防のためのキャンペーンです。キャンペーンのホームページでは動画もついています。


キャンペーン動画1:Youtube

あなたには人の命を助けられるだけの経験があります
 ちょっとした会話だけで、自殺の思考を中断できるという事を知っていましたか。サマリタンズは、「ちょっとした会話が命を救う」(キャンペーン名Small Talk Saves Lives)を、Network Rail(イギリス鉄道施設管理会社/準公社)、 British Transport Police(イギリス交通警察)およびその他の鉄道会社と共に、鉄道またはその他の状況下で、簡単な話しかけを用いて命を助ける事を一般人に広めてきました。

 これは、ちょっとした事で、簡単な事です。助けが必要だと思える人がいるとあなたが思ったら、その直感を信じて、会話を切り出すのです。会話しても、事態を悪くする事はありません。

会話を切り出すとは
 なぜ、このキャンペーンを行っているか。それは、「ちょっとした会話が命を救う」は、一般の人に向けて、鉄道および他の場所での自殺を防ぐための行動を起こすことを奮起してもらうためのキャンペーンだからです。自殺は防止可能であり、自殺の思考は一時的なので、中断させる事ができます。 我々はできるだけ多くの人に、危機的状況である人の存在に気づいてもらい、自信を持ってその危機的状況の人に近づいてもらいたい、と考えます。簡単な質問または言葉だけで、自殺思考を思い止め、回復への旅立ちを始めます。 我々は、人々は既に普通の会話の始め方を知っていると思い起こさせ、行動に移れるように人々に自信を付けてもらっています。

 ミドルセックスとウエストミンスターの大学によるサマリタンズと鉄道会社のための共同研究では、このような居合わせた人が参加するキャンペーンは、鉄道の自殺予防の中で、一般人が自殺予防の役割を持つという意味から価値のあるキャンペーンである事を示しています。
 我々は、British Transport Police、Network Rail、及び広い範囲に及ぶ鉄道産業をパートナーとして、この「ちょっとした会話が命を救う」キャンペーンを行ってきました。毎年何千もの鉄道スタッフに自殺予防の訓練を施しています。彼らの多くは、介入して(阻止して)、命を助けます。
鉄道スタッフに対しては危険な状態にある人を見つけ、そのあとに、簡単な質問から始めて、会話を続けるように、勧めています。こうして、ちょっとした会話は作られていきます。

 我々は、同時に、自殺思考を持った人や、自殺で愛する人を失った人、鉄道で良く旅行する人、一般の人から意見を聞きました。我々として、このキャンペーンを作りあげるときに、幅広く多くの経験を考慮して、確実なものにしたかったのです。
 このキャンペーンの重要な一例は、「サラのストーリー」です。ある駅のホームで、サラという女性が自殺を図ろうとしている時、見知らぬ人が話しかけ、自殺を止めさせる、というストーリーです。 サラ本人の許可を得て、彼女の物語からキャンペーンの最初の部分を作り、ちょっとした会話がどのように彼女の命を救ったかを示しています。

人混みの中、どうやって危機的状況の人に近づくか
何を話しかけるか

 何か話しかけ、かえって物事を悪くすると心配するかもしれませんが、そのような証拠はありません。誰かに近づく方法に、正しいとか間違いとかはありません。あなた自身の直感を信じてください。毎日あなたは、だれかとお話している事を思い出してください。 (その人に話しかけて)すぐに反応がなくても、それでもあなたは人を助けているのです。その人にただ話しかけ、思い込んでいる事を中断させるだけで、その人が助けを求められるくらいの前向きな気持ちになります。
 その人に近づくのが安全でないと思われるとき、または、その気になれないときには、通りがかりの人に伝える、または、警察に電話する事でも良いです。駅にいる場合、駅のスタッフ、または、同乗者にお願いする事もできます。命を助けるための手助けができます。

助けを求めているときのサイン
 人が辛い事に苦しんでいる時の行動は、誰にとっても違うものです。鉄道という環境で、その人が危機的状況を示すサインの幾つかは次のとおりです。
・一人で、ポツンと離れたところに立っている
・遠くを見つめ、殻に閉じこもる様子、何か動揺している様子が見られる
・そのホームに停車する電車に乗らず、ホームに残り続ける
 あなた自身の直感を信じてください。その人がそこでは場違いのように見える、または、何かが違っていると思えたとき、試しに会話を始めてください。

何を話すのか、予め考える
 毎日、人とおしゃべりしているのを思い出してください。このキャンペーンを盛り上げてくれた鉄道スタッフが使っていた、命を助ける質問には、次のものが含まれます。
・温かい夜だね。
・どの電車(どこ行きの電車)に乗るの?
・お名前は?
・何かお手伝いしましょうか? 何か困っていませんか?
・大丈夫? 体調はいいですか?
 覚えていてください、もし近づくのが安全でないと感じるとき、警察に電話してください。鉄道の駅にいるならば、駅のスタッフか、乗客の誰かに、その事を伝えてください。

気持ちにゆとりがない時
 覚えていてください、その人に近づく事が安全でないと感じるとき、警察に電話するか、駅のスタッフに警告してください。

その次の行動は?
 SAMを使います。鉄道の環境や他の場所でも、次の簡単なステップで会話を続ける事ができます。

会話をスタートする(START)
 ちょっとした会話は、大事なスタートです。大丈夫かと尋ねたり、あなたの自己紹介をしたり、その人にしゃべってもらうように元気づけたりできます。その人からの返事まで沈黙があるかもしれませんが、あなたは自分らしくしてください。

他の人に知らせる(ALERT)
 あなたは、一人で全てを背負う事はありません。鉄道の駅にいるならば、駅のスタッフ(サマリタンズからのトレーニングを受けているスタッフもいます)に気づいてもらうとか、通りすがりの人に通報してもらうとか、警察に電話してください。 その人に誰かを呼んで欲しいかを尋ねてみてください。

安全な所に移動する(MOVE)
 どこか安全で静かな所に座らせてあげてください。温かい飲み物を勧めるのも良いです。近くに元気づけてくれるスタッフがいるかもしれません。危機的状況の人に、助けてくれる人を教えてあげる事ができます。 この中には、サマリタンズや、初期診察医(=GP:General Practitioner、イギリスのNHS制度で患者の初期診察と治療にあたる一般開業医)の人々は、友人、家族と同様に助けてくれる人々に含まれます。 我々は、直接的な接触を勧めません。緊急事態で駅にいる場合、直ぐに駅のスタッフまたは警察に通報してください。線路に誰かいる場合、いかなる状況下であっても、絶対に線路には下りないでください。

お大事に
 あなたの助けは、大きな変化をもたらします。でもあなたにも影響が現れます。その後、感情的になり、何が起きたかを、誰かに話したくなるかもしれません。あなたが誰かの助けを必要だと思ったら、116−123のサマリタンズに電話してください。

 ホームに、若い女性が立っているのが見えました。彼女は靴を履いていませんでしたが、ホームに靴とカバンとジャケットがあるのがわかりました。近寄って、私の名前を伝え、話をはじめました。
  ―Rizwan Javed、サマリタンズの自殺予防の訓練を受けた鉄道会社マネージャー

もしもの時
もしも、何も応答がなかったら?
 思い込んでいる人は、話しかけられたと気づき、考えている事を中断するのに、暫く時間がかかります。この人は、遠くを見ているようで、あなたを聞いていないように見えます。辛抱してください。できれば、その人の視線の先に立ち、そこにあなたがいる事がわかるようにしてください。 あなたがもう良い、と思ったとき、試しにはなしかけてください。そこにあなたがいる、と分かってもらうだけでも、助けになります。

もしも、自分に対して話したいと思ってくれなかったら?
 その人が構えてしまうとき、少し待ってもう一度話しかけるか、または、駅のスタッフに連絡して気にしている事を伝えるか、警察に電話してください。自殺の考えは、大体一時的なもので、その考えを中断する事で、十分回復に向かいます。

もしも、間違った事を言ってしまったら?
 人が危機的状況に陥っているときに介入(中断)して、状況を悪化させた、という証拠はありません。また介入(中断)に完全な方法はありません。ただ、ベストを尽くしてください。あなたにとって、気になる人との会話を続ける事に気が進まないとき、駅のスタッフと連絡をとり状況を説明してください。 または、緊急電話(999)をしてください。

もしも、近づいてみたが問題なく、自殺しそうでなかったら?
 あなたが心配した人に近づくのは、良い事です。あなたが心配している事、その人が孤独でない事を示すのはその人に救いとなります。

もしも、その人が泣き始めたら?
 涙を流すのは悪い事ではなく、抱えている気持ちを解き放すのに役立ちます。その人には、あなたがそこにいて、助けてくれる、聞いてくれる、と思われるようにしてください。更に駅での手助けが必要な場合、駅のスタッフまたは、緊急電話(999)に電話してください。

サラのストーリー

キャンペーン動画2:Youtube

(訳者注:Sarah's Story、約1分半の動画です。鉄道で自死しようとした女性に近くの人が話しかけ、自殺を中止させてくれたことを、自殺しようとした本人が告白する、というサマリタンズ作成の動画です。動画の中に英語の字幕があり、 その対訳を付けました。 文章だけでなく、動画の良さも見ていただければ、と思います。)

Attention passengers on platform 11
  11番線ホームのみなさん、
I am sorry to announce that
  残念な事をお伝えしなければなりません。
There's been a serious incident on the line.
  この路線で重大な事が起きました。

We know that one individual involved
  一人の人物が登場します。
She was 28-years old Sarah Wilson.
  彼女は28歳のサラ・ウィルソンです。

Sarah left a note before leaving her home
  サラは家を出るときメモを残しました。
Because she had decided to take her own life.
  なぜなら自分の命を絶つと決めたからです。
But I am very pleased to tell you
  でも、喜んでお伝えしたいのは、
She didn't go through with it.
  彼女はやり遂げることはありませんでした。
Because someone took the time to stop and talk to her
  なぜなら、ある人が立ち止まり、穏やかに話しかけたからです。
That was all it took to interrupt Sarah's suicidal thought
  それだけでサラの自殺の考えは止められました。

I know this because
  私がこの事を分かっているのは、
I am Sarah.
  私がサラだからです。

I am sharing my story today to spread an important message
  今日、大事なメッセージを広く知ってもらうために、私の事を話しています。
That a little small talk can be all it takes
  ちょっとした短い会話だけで
To help start someone on a journey to recovery
  回復の道のりを歩みだすための手助けになります。

So if you think someone might need help
  人が助けを求めているように思えたら、
Trust your instinct.
    あなたの直感を信じてください。
Stop and have a chat.
  立ち止まって、おしゃべりをしてください。
Even a question about the weather can be enough
  天気についてでも十分です。
Or tell a member of staff
  または駅のスタッフに連絡してください。
You could help save a life
  命を助けるお手伝いができます。
For every life lost on the railway six are saved by those around them
  鉄道で失われた1人の命について、6人は その周りの人に助けられました。

(訳者注;サラ・ウィルソンは仮名です。この撮影自体は役者の演技でしたが、撮影現場にこの物語の本人は、居合わせたと書いてありました。)

出典:https://www.samritans.org/support-us/campaign/small-talk-saves-lives/
https://www.samaritans.org/support-us/campaign/small-talk-saves-lives/how-approach-someone-train-platform/            


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