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サマリタンズホームページより/19号

 

2018年8月9日発行

■新しい自殺統計――自殺の複雑な実態を解明し、自殺についてもっと自由に語るよう奨励――

解題:英国の2014年の自殺率(数)を取り上げ、自殺の背景と原因、予防に迫っています。なぜ、男性の自殺率が女性より3倍高いか。死にたい気持や考えを、タブーをのり越え自由に話すことの大切さ。死ぬ前に一人一人の物語を知ることが予防につながるとの確信。日本社会にも共通する内容が書かれています。


★2014年の英国における自殺者数は6,122人と記録されました。そしてこの数字は英国の膨大な自殺者数を印象付けるものです。
 (同年の日本の総自殺者数は25,427人:男性17,386人、女性8,041人 訳者)

★英国の自殺による自殺者数の変化を報告することは、自殺による悲惨な数に注意を向ける一つの方法です。

★変化する自殺率の複雑な背景を解明することは非常に困難です。しかし、英国国内の異なる地方における自殺率の変化を比較することで、もっと深く背景を解明できるかもしれません。

★友達や家族、医者、カウンセラー、またはサマリタンズに対し自殺の考えや気持についてもっと自由に開放的に話すよう人々を勇気づけることは、自殺を少なくする助けになります。

★自殺は避けられないことではありませんし、防ぐことができます。そして、誰もが自殺による死者数を確実に少なくするために役に立つことができます。

 本日発表された新しい統計で、英国における2013年と2014年の間に自殺率が2%減ったことが示されています。これは、2014年は前年と比較して自殺者数が120人減ったことと同じことを意味します。最初に、そして最も大事なことは、自殺者の数が減ったことは――その数がどんなに少なくても――大歓迎ということです。しかし、男性と女性の間や地域間にある異なる傾向は、この全般的な傾向からは見ることができません。

 2014年の女性の自殺者数は、前年と比較して113人多くなっています。一方、男性の自殺率は2013年に比べ5%以上少なくなっています。それでも、男性は女性と比較してより自殺しやすい傾向にあります。2014年に国家統計局によって発表されたこれらの新しい数字は、国内における最近の自殺に関する実態を提供しています。また、最も自殺の危険性の高いグループ(階層)に関する情報も含んでいます。

 複雑な実態を解きほぐすのは容易ではありません。しかし自殺によって亡くなる膨大な数を減らす効果的働きかけのためには必要なことです。次のことは明らかになっていません。2014年における女性自殺者数の増加が、今後も継続する不安な傾向の出発点なのか、それとも次の年は逆転する可能性があるのか。そして、英国男性の自殺者数減少の最初の流れが今後も維持されるものかもわかりません。

全ての自殺は悲劇
 自殺率は年々のまたグループ間の自殺傾向を比較する最も確かな基準です。本日の新しい統計は英国における膨大な自殺数を印象付けるものです。6,122人の自殺者数が2014年の数として記録されました。自殺者の個々のそして全ての死は恐ろしい悲劇です。突然の別離は家族、友人、仲間・同僚に致命的影響を与えます。

自殺による別離の場合、打ちのめされた感情、理解できない感情、罪悪感はコミュニティと世代を超えて拡大していきます。自殺による6,122人の一人一人の背景には物語があります。もし仮に私たちがこれらの一人一人の物語を個人として、組織として、社会としてより良く理解し、より上手に彼らに接し、裁くことなく話を聴き、共感と親密さを提供することができれば、これらの死の多数を、多分、ほとんどを防げたかもしれません。

自殺について自由に話すことが大切
 自殺による死亡者数と自殺率の変化を報告することは、自殺による悲惨な数に注意を向ける一つの方法です。私たちサマリタンズはこのような形で情報を発表することで、自殺についての考えや気持を多くの人がより自由に話し、また、助けを求めることに関するタブーと障害を打ち破る手助けをしていると信じています。そうすることで、自殺したい気持になった時や困難と闘っている人々が、より容易に助けを求めることができるようになるだろうと信じています。

 困難に直面し誰かと話したい人は誰でも、サマリタンズの116−123、テキスト、email を利用できます。電話は何時でもいかなる種類の電話からでも無料です(たとえあなたの携帯電話に預金がなくても)。サマリタンズへの電話は請求されません。

自殺者数の経年変化
 新しい数字は英国における自殺の傾向の変化を暗示しているように見えます。男性と女性の両方において。1980年代、1990年代、2000年代、自殺率は男性・女性の両方においてかなり確実に減ってきて、2007年には歴史的に最も低くなりました。残念ながらこれ以上長く続きませんでした。2007年以来、男性における自殺率はかなり確実に増えてきました。一方、女性の自殺率は比較的に同一線を維持してきました。2014年における新しい数字は、変化が再び始まったとの最初の兆しです。2014年、女性の自殺率が上がりました。男性は2010年以来初めて下がりました。ただし、男性は女性の3倍自殺しやすい状態に留まっています。

 変化する自殺率の背景にある複雑さを解明することは非常に困難です。異なった年代のグループにおけるパターンを詳しく見ると、ここ数年間と同じように、自殺率は男性・女性の両方において中年が最も高いことが判明しています。しかし、今年の自殺率に関しては全く明確な説明は与えられていません。国内の異なる地方における自殺率の変化を比較することで、もっと解明できるかもしれません。スコットランドの自殺率は近年減少しています。特に男性の自殺率が大幅に減少しています。2014年にスコットランドの自殺率は全体として英国全体と同じパターンに準じていました。女性が上昇し男性が減少していました。ウェールズにおいても2014年には自殺率は減少しました。特に男性は減少しました。自殺傾向における性差の違いは、国全体の最近の変化を理解する最も重要な手がかりです。

男性は女性より自殺しやすい
 英国においては過去から現在まで女性より男性がより高い自殺率を保持してきました。最近の数字は、男性の自殺率は依然として女性に比べ3倍多いことを示しています(10万人対する自殺率:男性16.8人、女性5.2人)。(日本の男性自殺率は女性の約2倍です。男性28.1人、女性12.3人 訳者)

 サマリタンズによる研究報告は、なぜ女性に比べ男性の方が自殺しやすい傾向にあるかの複雑な理由に注目しました。その理由として私たちは、失業、壊れた人間関係、社会的関係の崩壊がそこにあることを発見しました。それに、衝動性や感情を語る際や助けを求める際の心の障壁というような心理的性格を伴っていることが判りました。社会・経済的に最も恵まれない出自をもつ中年男性は自殺の危険性が最も高いと言えます。しかし、それでもなお、なぜ、男性において自殺の危険性が高いのか、その理由については、わからないことがまだまだたくさんあります。

 私たちサマリタンズは困難と闘っている誰に対しても、男性であろうと女性であろうと励まして助けを求めるよう一生けん命働きかけます。困難に直面した時に女性はそれを誰かに話しますが、男性はあまり話さない傾向があります。これは明白な事実なのですが、どうしてかの理由は明確ではありません。複雑な理由があるのでしょう。女性が困っていることに対しては支援が女性のニーズに合っている可能性が考えられます。これは沢山の自殺予防の分野の中でもっと研究が必要な分野の一つです。私たちは男性の自殺が高くなってきている危険性を再強調します。そのことで、今日の新しい数字が、困難に直面している男性の生活に特別に注意を払うよう、そして助けを求める男性を支援するよう呼びかけています。

自殺の重荷を軽減すること
 2014年の自殺者6,122人がもたらし今後も続いていくであろう悲惨さを理解することは困難です。ガンや冠動脈性心疾患のような公衆衛生上の問題とは異なり、自殺は働き盛りの人に起こることです。2014年においては男性・女性にとって最も高い自殺率の年令は45〜59歳です。そして、ガンや心臓病と違って、多くの人は、自殺について話すことを依然として難しいと感じています。自殺したいという考えや気持ちを抱いた時――友達であれ家族であれ、医者、カウンセラー、あるいはサマリタンズに対してであれ――人がそれをオープンに話すよう励ますことは、自殺を少なくする助けになると、私たちサマリタンズは信じています。

 私達は今日の兆候が続くものかどうかを確かめるために、自殺率が将来に向かってどのように変化していくか注意深く見守っていきます。自殺は避けられないものでなく防げるものです。私たちは速やかに効果的に責任を果たしていくために他の人々と一緒に協力して働きつづけます。今日の新しい数字はまだまだやるべきことが多くあることを思いださせてくれる重要なものです。私たちは自殺による死者を確実に少なくするための努力を増していかなければなりません。そして私たちの誰もがその役割を担っていくことができます。

(2016年2月4日 By Hazel Nunn)

出典:Home>News>New suicide statistics:unravelling the complex picture and encouraging people to talk more openly about suicide


■掛け手の体験談―サイモンの話―

解題:男性は女性より自殺する確率が高いことから男性の事例をあげて、どのようなことに苦しみを感じているのか、また誰になら自分の気持ちを吐き出せるのか、インタビューを通じて生の声を聴きたいと思います。身近な人に話せないことで深刻な事態へ発展しやすい事、自分を取り戻すためにはどんな協力が必要なのか、男性が相談しづらいと感じる社会的背景を考えつつ、相談者の声に耳を傾けたいと思います。


 サイモンは彼の感じ方のいくつかの変化に気づいていましたが、メンタルヘルス・ティームに問い合わせた後でも彼はまだ気持ちを処理するためにもがいていました。

 彼はサマリタンズに電話し、彼の問題を打ち明けました。「私は彼らに電話するまで、彼らのサポートが私の人生にどんなふうに前向きな影響を与えるのかまったくわかりませんでした。」

 2003年、サイモンは彼の感じ方に変化があると気付きました。彼はうつ病に苦しんでいましたが、悪くなる一方でした。人々が彼をどう思うか心配で彼は外に出ることも友人に会う事も避けました。

 彼のGP(ホーム・ドクター)は広場恐怖症と診断し、メンタルヘルス・ティームに紹介しました。しかし彼はまだ問題を処理することにもがいていました。サイモンの説明です。

「一人の男性としてどう感じるかを打ち明けるのはまだ難しいです。弱々しさを見せたり、感情を分かち合うことは『男らしくない』のです。問題はうつ病と戦っている男性に、この『男性らしさへの期待』がダメージになり得るということです。もしこのことを抑え込み続けようとするなら、時間が経つにつれてあなたを苦しめるでしょう。」

 サイモンは困難な精神的健康と戦っていましたがまだ良い状態でした。2014年まで、うつ病と広場恐怖症は彼の人生のすべての事に悪影響を及ぼしていました。

「うつ病がどれほど孤独なものなのかを説明することは簡単ではありません。あたかも暗い泡の中に外を見るすべもなく閉じ込められているようです。人々には不運な人生を送っているとわかっていても、どう助けたらよいのかわかりません。2005年まで、そんなにも長い間引きこもっていたので、社会状況は私にとって大変でした。私の家族は私が家から出るために私を励まそうとよく来たものでした。私は闇雲に拒否しました。私はただ外に出ることすらも出来なかったのです。思っただけで怖かったのです。

「私は人生の中の貴重な10年をこのように独りぼっちだと、そう感じながら過ごしました。これは私が死にたいと感じる理由の一つだと思います。これらの思いや感情は一度ならず自殺しようという思いにさせました。」

 彼が不幸と感じていた2014年、サイモンはサマリタンズに連絡をとりました。

 彼は言います。「私はサマリタンズについて聞きました。そして彼らは話を聞いてくれるためにいるのだと知りました。私は彼らに電話する前、彼らのサポートが私の人生にどのように前向きな影響を与えるのかわかりませんでした。

 「初めて電話した時、自分の気持ちをどう言えば良いのかわからず躊躇したことを覚えています。私はかろうじて電話の終わりにサマリタンズに自分の気持ちを打ち明けました。彼は私に時間をくれ、話すまで待っていてくれました。彼は話を聴いて、そして飾ったようなアドバイスではなく、むしろ私自身のやり方で立ち上がる手助けをしてくれました。

 「私は自殺について考えていたという説明をしました。彼は私に支部まで歩いて来るよう、直に会いたいと言いました。この考えに驚き、ドアの前で躊躇しました。

 「ボランティアの人は依然として私が入り口から歩いていくまで電話で話していました。一体何が私の気持ちを沈ませ、鬱にさせるのかについて話す前に、私は暖かい笑顔で迎えられました。私は、私が来たい時にはいつでも戻ってくることができると言われました。そして孤独を感じる必要はありません、と。

 「話を聴くために時間を問わず誰かがそこにいてくれるということを知ることで、私の生活の質は改善されました。もはや誰にも理解されず自分は独りぼっちなのだとは感じません。サマリタンズに連絡すると決心した日、私は自分を取り戻しました。」

 サイモンは「今だからわかります。もっと早くサマリタンズに連絡すればよかった」と言います。彼は、話を共有することによって無言の中で独り苦しんでいる人が少なくなることを望んでいます。

 「あなたが感情を無視することはそれを無くすことにはなりません。大抵の人は自らを悩ませている事を隠し、持ち続けます。その問題は、もしあなたが一人であなたの全ての恐怖感に挑戦し、取り組もうとすれば、あなたは自分で解決できるという事実を見失うかもしれません。サマリタンズは聴くだけでアドバイスをしません。彼らは一人一人が人生のエキスパートだということを知っています。そして、耳を傾けてもらえれば、あなたはあなたの問題をより扱いやすいものへと小さくしていくことができます。

 「あなたはサマリタンズに自分の好きな時に、昼夜を問わず電話することができます。」

出典:Home> How we can help you>How ourservice helps>Personal experiences of contacting Samaritans>Simon's story


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