万葉広場トップ画像
 このコラムを「万葉広場」と名付けました。
万葉集の名にあるように万葉とはよろずの言の葉を意味しています。 私たちが便利に使っている葉書にも葉の字が使われています。 戦国時代にタラヨウという木の葉の裏に文字を書き情報のやり取りをしたのが葉書の由来だそうです。
 「万葉広場」はいのちの電話の活動を推進している私たちが、日頃思っていること、 感じていること、心掛けていることなど、その一端を皆様に紹介する「言葉の広場」です。

コラム9 レンズ

イラスト9


「あなたの見ている赤色と、私の見ている赤色は、同じだと思う?」テーブルのリンゴを見て知人が言った言葉です。その時の知人は、私とあなたとでは、同じ世界を見ているようだけれど、実はそれぞれ固有の「レンズ」を通してしか、視ることが出来ないんだよ、と言いたかったようです。

「レンズ」は「色眼鏡」と言い換えると、分かりやすいかもしれません。
「そんなことはない、私は自然のままを視ている」という方もいらっしゃると思いますが、 果たしてそうでしょうか。

たとえば、同じ映画館で、同じ時間に隣の席に座って、同じ映画を観たとしても、感動するところ、涙が出るところ、笑うところは、人によって違います。それは、これまで得てきた経験や考え方の違いによって磨かれた感性が、「レンズ」として作用されているのかもしれません。
組織の中に、新しい仕組みを作ろうとするとき、いろいろな問題が出てきます。

組織そのものを大切に考える立場、あるいは組織の人を大切に思うところから考える立場。いろいろな立場からゴールを目指すことによって軋轢が出てきます。違う立場の「レンズ(色眼鏡)」から視ていると、そもそもの目指すゴールの景色が違っている可能性もあります。
又、それぞれの立場の人が「レンズ(色眼鏡)」を通して視ていること自体を、気付いていない場合もあると思います。それは、その組織自身の持つ規則や慣習によって、知らず知らずのうちに身に付いた「レンズ」なのかもしれません。

生活保護を受けている方達を支援しているNPOの方に話を伺ったことがあります。
生活保護を受けている方の自殺率は一般の方の2倍にもなるそうです。
生活保護を受けられるようになれば、とりあえず安心できる。そのように私は考えてきました。しかしその方達は、生活保護を受ける負い目や申し訳ない気持ちに苛まれるそうです。そして誰とも話が出来ない孤独な人も多いとのことでした。
知識がないため、学ぼうとする姿勢がないために、視えていない事があること自体気付いていませんでした。これは私の「レンズ」の性質の一端です。

「レンズ」は外すことが出来ないそうです。「レンズ」はアイデンティティと言えるかもしれません。「レンズ」に付いている色を薄くしたり、屈折率を低くしたり、そのレンズの視野を広げたりすることは出来るかもしれません。
大切なことは、一人一人がそれぞれ固有の「レンズ」を通して、視ている、考えている、感じている、ということを改めて認めることではないかと思います。そして、一人一人が持っている固有の世界をどのようにして繋いでいくのか、だと思います。

私は私の「レンズ」を通して視ている。そしてあなたはあなたの「レンズ」を通して視ている。そしてそれをどうやって繋いでいこうか。このことをしっかりと心に持ちながら、電話を受けていきたいと思います。

コラム10 「今を生きる」悲しみを超えて

高木慶子(よしこ)さん(上智大学グリーフケア研究所 所長)のお話を聞きました。
“悲しみを乗り越えないと、今を生きていけない”
“苦しみのない人は世の中にいますか?”
この言葉をキーワードとして覚えていてくださいと。

人の苦しみ悲しみがわかる人は、自分の悲しみ苦しみをしっかり受け止めている人である。悲しみ苦しみを人のせいや周りのせいにしていると輝きはでてこない。

高木さんは、毎月東北の被災地に行かれているそうです。その中で被災者とのかかわりを紹介されました。伺ったお話の中から一つ紹介します。

7人家族だったのが、津波で6人を失い、自分だけが生き残った男性のお話をされました。高木さんは来月また来ますから、お会いしましょうねと翌月会う約束をされ続けられたそうです。2人(妻と子ども)は遺体が見つかったが、4人(母と子ども)は遺体がなかなか見つからなく、高木さんとの毎月の約束を果たしていました。一年後に漸く遺体の見つからなかった4人の死亡届をだされ、6人の葬儀を高木さん(カソリックのシスター)にお願いされました。

高木さんは最後に次の歌を紹介されました。

You Raise Me Up
When I am down and, oh my soul, so weary;
・・・
You raise me up... To more than I can be.
「ユー・レイズ・ミー・アップ」訳
私が落ち込んで私の魂(心)が(肉体的・精神的に)疲れきってへとへとになった時
・・・
あなたが傍らにいて私を支えてくれるから、私ができること以上にやれるの

人は人によって支えられて生きていける。人を支えることが生きる力にもなる。
与えられた悲しみに意味があると信じて、悲しみを超えて「今を生きる」。そのためには、人と人との繋がり、絆が大切なのだと。

電話でお話を伺うことで、かけ手の悲しみ・辛さ・苦しさに少しでも寄り添うことができ、かけ手の方がちょっとした力を貰っていただけたらと願います。
高木さんは、その人から貰うちょっとした力で人は生きていくことができる。それは明日一日生きてみようとの力かもしれないが。その積み重ねで生きていくことができたらとおっしゃっていました。

イラスト10


これまでのコラム一覧→

広報誌

講演会
インタビュー

万葉広場

サマリタンズ(ホームページより)

よみもの

全国いのちの電話連盟

暮らしと心の総合相談会

埼玉いのちの電話後援会

ページトップへもどる