万葉広場トップ画像
 このコラムを「万葉広場」と名付けました。
万葉集の名にあるように万葉とはよろずの言の葉を意味しています。 私たちが便利に使っている葉書にも葉の字が使われています。 戦国時代にタラヨウという木の葉の裏に文字を書き情報のやり取りをしたのが葉書の由来だそうです。
 「万葉広場」はいのちの電話の活動を推進している私たちが、日頃思っていること、 感じていること、心掛けていることなど、その一端を皆様に紹介する「言葉の広場」です。

コラム7  願い

「こころ」にハマった頃がありました。
夏目漱石・著の「こころ」です。
当時の私は、登場人物が、なぜ自死してしまうのか、分かりませんでした。
ちょうど国語の教科書に一部が掲載されたので、国語の先生に聞いてみました。
国語の先生の答えは、それなりに納得できるものでしたが、分かったとは言えませんでした。

月刊「みすず」No.611 2012年12月号に、森川すいめいさんの「自死の少ない町にて――徳島県旧海部町を歩く」が掲載されています。
旧海部町を訪ね、町を歩き、その土地の人と話をして、その町の特徴を書かれています。
その町には「朋輩組(ほうばいぐみ)」という組織があります。
朋輩組は、同世代の人が8人から18人くらいでグループを作って、生涯互助をする仕組みで、町全体では何十組かがあります。組への出入りは自由、罰則なし、規約なし。
朋輩組は、とにかく話し合い、何かあったら話し合って解決していきます。
親戚に言えない事や、一人で解決できない事も、仲間になら言え、話し合って解決していきます。
そういう風にして、コミュニケーション能力を高めていきます。
(文中より)「コミュニケーション能力が高くなって、情報集積がされていけば、何か問題が見つかったときにすぐに解決できやすくなる。知っていることが多いということに加え、知らないことを調べる力がついている。問題は課題へと置き換えられ、課題は解決するものだと知っていると、危機介入力がきわめて高くなるから、安心して人は悩むことができる。」
旧海部町は、このような仕組みが出来上がっている町のようです。
ご興味のある方は、ぜひ全文をお読みになってみてください。

そういえば、先日の斉藤先生の講義に
「自殺予防というのは、死にたいと言う人の背後にある悲しみをしっかりと受け止めること。
それが自殺予防につながる。決して物々しいものではなく、日常的な対等な目線の中から、人の悲しみを共感し、それに寄り添うことが、自殺予防。」
というお話がありました。
(斎藤友紀雄先生の講義の全文は、埼玉いのちの電話のホームページ、広報71号から読めます)

「こころ」の「なぜ自死してしまったのか」、という私の疑問に対して、国語の先生の答えは「孤独」でした。
今の私は、100%分かったとは言えませんが、かなり納得しています。

「こころ」と国語の先生は、分からないながらも「孤独」の不気味さと怖さを教えてくれました。
森川すいめいさんの文章は、「孤独」に陥っている人、あるいは陥りそうな人を、地域としてどのように対応するのがよいのか、という問いに対しての、一つの答えを示している、と思います。
そして、斎藤先生のお言葉は、そのような人と、どのように接すればよいのか、を教えてくれているように思います。

考えるべきは、人と、人を想う人を、どのようにして繋いでいくのか、なのではないかと思います。
そして、少しでもその間を繋いでいければ、と願いながら電話に出ています。

コラム8  箱根駅伝から

イラスト8


年始は初詣に行き、あとは箱根駅伝を見ていました。
今年は東洋大学がどうなるか、優勝はどこになるのかと
興味を持って観戦しました。
例年どおり、脱水症状なのかふらふらになりながらも
必死の思いでタスキをつなぐ姿がありました。

なぜ、こんな寒い中でこんなにもつらい苦しい思いをする
必要があるのでしょう。しかもこのときだけなのではなく
それぞれの選手は何年も前から優勝を目指して苦しい練習
に耐えてきています。なにかを心に決めて。

楽なこと、自分にいいことだけをしていると、生きる力が
減っていく、苦しいこと、他人のためになることをしてい
ると、生きる力が湧いてくる。生きる力の源は、きっと
楽より苦しさ、利己より利他なのでしょう。
人間は元来このように心が動くようにできているようです。
なんとも不思議です。
駅伝を見ながら、自分の“いままで”を重ねてこんなこと
を考えていました。

日体大優勝の瞬間のアナウンスは涙を誘う感動的な歴史的
ストーリーが織り込まれていて、いつもながらテレビの
演出はさすがだなぁと思いつつ、しっかりそのしかけに
のせられている涙もろい自分に気が付きました。(S)

これまでのコラム一覧→

広報誌

講演会
インタビュー

万葉広場

サマリタンズ(ホームページより)

よみもの

全国いのちの電話連盟

暮らしと心の総合相談会

埼玉いのちの電話後援会

ページトップへもどる