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 このコラムを「万葉広場」と名付けました。
万葉集の名にあるように万葉とはよろずの言の葉を意味しています。 私たちが便利に使っている葉書にも葉の字が使われています。 戦国時代にタラヨウという木の葉の裏に文字を書き情報のやり取りをしたのが葉書の由来だそうです。
 「万葉広場」はいのちの電話の活動を推進している私たちが、日頃思っていること、 感じていること、心掛けていることなど、その一端を皆様に紹介する「言葉の広場」です。

コラム23 愛娘の死を乗り越えて

  5月26日の毎日新聞朝刊のトップに「娘が愛した海の味」という題の取材記事があり、関連記事に大きく紙面を割いていた。
 3.11の東日本大震災で、大船渡市越喜来(オキライ)にある北里大学海洋生命科学部に在籍し、同学部生でただ一人の犠牲者となった女子学生にまつわる話だった。
 子どもの頃から海が大好きで、水族館の学芸員を目指して、学生生活をありったけのエネルギーで過ごしていたような、前向きだった女子学生の死の記事に、人間の生き様について考えさせられた。

 両親が娘さんを探すために何度も通うなかで、娘さんがどんなに充実した学生生活を送り、周囲から愛され、どんなに越喜来を愛していたかを知る。
 そして、一人娘を失い身もだえするほどの苦しみを何とか吹っ切り、必死で前を向こうとしている様にみえたという両親が、「娘は大好きだった海に嫁がせてやろう」の思いに至り、娘が愛し愛された越喜来と繋がっていたいという思いが強くなる。
 そして、産地の食べ方で、魚の美味しさを知って欲しいという思いの同大OBの男性と出会い、志木市内に三陸の地元でしか味わえない料理を出す居酒屋を出店して、一年になるという。
 出店には、最新の冷凍方法で、越喜来の人達が調理した物をそのままお店に出せるところまで請け負ってくれた。

 これらの出会いは、亡くなった娘さんが引き合わせたようなものだった。
 「自分のためにだけに生きようとすると、人は折れてしまうんです」という男性の言葉と、この記事の底に流れる人情の温かさに、人の間と書く人間の文字の意味を考えさせられた。

*北里大海洋生命科学部は震災を機に閉鎖され、今春越喜来から完全撤退の方針を示した。

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